日穏-bion』という劇団の主宰者であり、女優さんでもあり、脚本まで描いている岩瀬晶子さん。
とあるお芝居の稽古の開始日というタイミングで稽古場に突撃し、お話をうかがいました。

今回、なんと再々演だという舞台の演目は、『初恋』
『初恋』をテーマにした、四つのお話からなる舞台です。
既に2回上演しているわけですが、もともとは役者さん11人で、それぞれのお話を演じていたそうですが、新型コロナウイルスの蔓延ということもあり、なるべく少人数でという話から、最終的に二人でやってしまおうということになり、伊原農(いはらみのり)さんという役者さんと二人で、それぞれのお話の四役を演じることになったそうです。

「前回、前々回、ご覧になった方にとってはまた新しい角度で魅力的なお芝居になっています。いろんな役を同じ役者がやっています。演じる側としては今回初めてなので、できるのかな?と言う気持ちもありますが、観てくださる皆さんは楽しいんじゃないかな?と思います」と、岩瀬さんご自身もおっしゃっています。

4話あるということですので、それぞれのお話について教えていただきました。

まずは第一話、季節は『春』
観覧車の中で出会った高所恐怖症の女性とヘビースモーカーの男性のお話です。
見知らぬ二人がなぜか同じ観覧車に乗せられてしまって降りてくるまでの、たった一周だけのゴンドラの中のお話ですが、途中観覧車が止まってしまうハプニングがある、コメディー。
このお話は3年前に「劇王東京」と言う短編の演劇祭で優勝して、全国大会の「かもめ短編演劇祭」で戯曲賞と俳優賞を獲得した作品です。
この第一話だけでもワクワクします。

第二話、季節は『夏』
時代は昭和25年まで遡ります。
戦争がテーマで、戦争の影響を受けてしまった男女の切ない物語。
第一話目のコメディーとはガラッと趣が変わって、急にシリアスになります。

第三話、季節は『秋』
時代はまた現代に戻り、お話もまたコメディー調です。
でもそこにも戦争の影のようなものが出てきて、ちょっと切なく終わります。

そして最後の第四話、季節は『冬』
昭和39年の娼館の話です。
古ぼけた娼館で田舎から出てきた年齢を重ねた娼婦と、そこにやってくる昔の彼女が忘れられない男性とのお話。
結構笑える部分もあり、最後は心が温まるような、切ない感じのお話だそうです。

時代が昭和39年、戦後20年弱で東京五輪の年です。
世の中はだいぶ復興してきている時代ではありますが、この時代を選ばれたのは、やはり戦争と関係しているからだとおっしゃいます。
上り調子になっている日本を背景にしつつも、人々の心の中にはまだ戦争が残っていて、物語の中ではそういう中で時代に取り残されている二人のお話だそうです。
その辺りを考えながら観ると、面白さもまた一層引き立ちます。

これら四話の原作も脚本も、岩瀬さんがお書きになられています。
昔から書くのがお好きだったとかと思いきや、そうではないとのこと。
『日穏-bion』を立ち上げたのが2008年で、作品を書くのはその時が初めてだったそうです。

「その前にちょっと頼まれて書いたものもあったのですが、あまり自分でやろうという感じではないまま、それでも最終的には、自分でプロデュースしてやってみようと思い、これで終わるかな?と思いつつ10年以上が経ちました。書いているのは戯曲ですし、戯曲は会話なので、小説のような長い文章を書いているわけではないですが、それでも未だに書くのが大変です」と、岩瀬さん。

こんな風に岩瀬さんはおっしゃいますが、テレビドラマの脚本などもしっかり手掛けていらっしゃいます。
時間が決まっているその中にストーリーを納めなければならない脚本をお書きになれること自体、書くための素晴らしい才能をお持ちであることの証明です。

さて、今回の舞台『初恋』の上映日時、上映場所のお知らせです。
11月5日(木曜)~8日(日曜)
会場は、『シアター風姿花伝』 
最寄り駅は、西武池袋線の椎名町駅、あるいは西武新宿線の下落合駅。
もしくは、少し離れている目白駅から行ったとしても、目白通り商店街を歩きながらの劇場までの道すじも楽しいものになると思います。

また、今回の新型コロナウイルスの蔓延の影響もあり、この舞台はライブ配信も行います。
7日(土曜)の13時の回の後にアフタートークライブを行いますが、配信はそこから2週間ご覧いただけます。
有料配信となりますが2週間の間にぜひアクセスしてみてください。

今回はコロナの為に、多くの俳優さんやミュージシャンの方々が苦労されています。
もちろん、劇場スタッフさんたちも同じく影響を受けましたので、その救済のためもあって企画したライブ配信だそうです。
笑えて泣ける心が温かくなる作品だそうですから、ぜひ劇場もしくはライブ配信でお楽しみください。

詳しくは、動画をご覧くださいませ。