先週『ありがとう地球』という曲のお話をうかがった岩堀美雪さんですが、『岩堀美雪』といえば、なんといっても『宝物ファイル』です。

小学校の先生をなさっていた時代から数えて22年間。
2000年11月28日スタートとのこと。
奇しくも、この音声の放送日は2022年11月29日なので、23年目の幕開けの日です。
計算していたわけではないのですが、たまたまなのです。

でも、前回もお話させていただいたように、岩堀さんとの再会も、とても天の配剤としか思えないタイミングでしたから、きっとたまたまではないのでしょう。

実際に学校で運用されていたのは15年間ということですが、それは、小学校を6年も早く退職されてしまったからです。
ご本人も周囲も『天職』と思っていた小学校の先生を辞めてしまわれた理由が、これまたすごいのです。

「『宝物ファイル』の有効性を科学的に検証して、英語で論文を書いて世界のジャーナルに乗せてもらって、世界に向けて発信しようと思ったからです。」と、こともなげにおっしゃる岩堀さん。

本当にびっくりなのですが、大阪の大学の大学院の博士課程を受験し、合格し、花の女子大生に!!

「研究の道はかなり茨の道で、勉強する事はすごく楽しかったです。心理学・医学・脳科学・児童精神医学。演習もいっぱいしたんですけど、研究については、なかなか協力してくださる学校を集めるとか、そういうのが大変でした。」と岩堀さん。

そもそも、『宝物ファイル』とは、どのようなものなのかを岩堀さんにお聞きしました。
「100円ショップの、このクリアファイルが一生の宝物になるんです。これを作る目的は、『子どもたちが自分のことも家族や友達のことも大好きになろう』ということを目的としてまず書いて、その次に自分の夢や願いを書いていくんですけど、タイトルは、クラスで相談して決めます。その後は自分で入れたいものを入れていくんですけど、遠足の写真とかスライムとか。その次に授業では自分で自分の良いところを書きます。その間に、友だち同士、良い所を書きあう。保護者の皆さんにも良いところを書いてもらって、私が子どもたちの良いところを書いて、全員分。子供たちが家族の良いところを書いて渡します。後は自分の頑張ったことを学校で作った絵本とか英語のカードとかどんどん入れて行ったり、そして、もう一度自分の良いところを考え、一年間の終わりには、最初の目標も見ながら、自分がどんなところが成長したかを考えます。シンプルです。」と、説明してくださいました。

この『宝物ファイル』を一年間通してクラスの子全員で取り組むと、生き生きとしたクラスが出来上がってくるということで、その効果は、岩堀さん自身が驚くほどだったとおっしゃいます。

「ほんとに自分に自信がなくて、何一つするのでも私のところに来て「これやっていいですか?ノートに書いていいですか?」と聞いていた男の子が、体育大会の応援団長を「僕がやります」と自分が手をあげたり、教科書を開かない、宿題も一個もしてこなかった男の子が、勉強好きになりました。あるいは、保護者の皆さんからも「あれだけ反抗的だったうちの娘がピタッと反抗しなくなりました。」と言われたりが、続々と起きてきました。その効果を目の当たりにするに連れて、これをこの世に広めて、いじめや自殺を減らしたいなと……。そしてそれを日本から世界中に広めていくことで、世界中の皆さんが自分の国も周りの国のことも大好きになる。「私の宗教もあなたの宗教もそれぞれいいところがありますよね」と……。そういう世の中が来たら、悲しい戦争が一つでも減って、子どもたちの笑顔が一つでも増えていけばいいなと。残りの人生はそのために生きようと思った次第です。」と、岩堀さんはおっしゃいます。

そもそもの出会いのきっかけは、2013年8月10日に行われた『あこがれ先生プロジェクトinいばらき』という講演会。
これは、講演家として有名な中村文昭さんという方が、学校の先生にスポットライトを当てようということで、素晴らしい活動でクラス運営に成功している学校の先生にお話していただくという全国各地で行われている講演会でした。

茨城県で行われていたこの会で、女性の先生が二人お話しされたうちの一人が岩堀先生だったわけです。

一目ぼれして、その場で連絡先を交換し、その週のうちに一時間を優に超える長電話をし、「ラジオ番組に出てください」とお誘いしたのですが、福井に取材しに行く経済力がなかったので、福井にうかがうことは無理でした。
そこで、次に上京するタイミングをお聞きしたら、答えは『来週』……。

現役の小学校の先生が、立て続けに福井から東京に来るというのは尋常ではないことです。
理由を確認したら、超有名企業からの講演依頼があっての上京とのこと。
『宝物ファイル』の効果は、一般企業の運営にも効果があるということで、大手企業からの依頼があったり、NHKから取材を受けて番組になったりと、強烈にすごい『先生』だったのです。
そこからのお付き合いで、間もなく10年になろうとしています。

そして、そこからほんとにずっと地道に研究を始められて、なんと、今年の9月22日、念願の学位を取得されたのです。

『宝物ファイル』を実践すると『自己肯定感』がアップするという構図の証明は、素人考えでは簡単そうに見えるのですが、学術的な側面からは、難易度はとても高い上、下敷きになる論文や研究がないテーマで学位にチャレンジするということは、通常ないそうです。

しかし、『すべて英語』での対応という無謀ともいえることに、長期間向き合い、とうとう分厚い壁を打ち破ったのが、今年なのです。

「『宝物ファイル』、自分で始めたプログラムの世界を広げたいというために仕事を辞めて学位を取る人は、ちょっといないですよね。収入が一度『0』になるわけですから……。子どもたちが教えてくれた、あまりにも目の前で成長していく姿を見せてもらって、私自身がとても幸せだったんですが、これが世の中に広まったらいいなと考えずにいられない位の成長ぶりだったんです。」と、うれしそうに語る岩堀さん。

英文で学位を取得するということは、科学的根拠が認められ、ジャーナルにその論文が掲載されるということ。
これで、福井県鯖江市の小さな小学校で実践されていた『宝物ファイル』が、世界規模に広がる扉を開けたということになったのです。

たった一人の学校の先生が、ここまでの影響力を自力で作っていくという物語自体も多くの方の心を動かす内容です。
一人でも多くの方に知っていただき、この輪を広げていけたらと、心から願っています。

詳しくは、動画をご覧くださいませ。

岩堀美雪さんの会社『子どもの笑顔』
https://treasure-file.com/