今年の夏はずっと東京にいらしたというロッキーさんですが、未発表の作品がたくさんお手元にあるとのことで、それらの作品が順番にサロンに登場しているようです。

以前に撮影されたという蔵出し作品のおかげで、『ときめきの富士サロン』は、変わらずに新しい作品に出会える素敵な場所となっています。

実際に、ぜひ足を運んでいただきたいのですが、こちらのサロンは、壁一面に飾られた『ときめきの富士』に囲まれた癒しの空間。
ゆっくりと気持ちをリセットできます。

そして、ロッキーさんは以前撮影した作品群に対して、「今の世の中で観える富士山よりも、もっと最高に綺麗だった時の、季節が明確で春秋秋冬にはっきりとした変化があった時の富士山を全て撮っていますので、この数カ月間は蔵出しをしていいかなと……」と、こんな風におっしゃっています

確かに、最近では日本らしい季節感が失われてきているので、雪のない富士山の時間が長く、寂しいかぎりです。

さて、今回の作品は、『早暁』
「早い暁」と書いて、「そうぎょう」と読みます。
縦使いの作品なんですが、この色合いとコントラストが最高です。

「前にも話しましたが、深夜から始まって、『未明』『暁』『黎明』『曙』といたる時の、稜線に光が見えてきた時が『暁』ですよね。

『早暁』ですから、『暁』の時間帯の中でも早い時間帯に訪れたシャッターチャンス。
とはいえ、普通にこの作品は撮ることはできません。
ロッキーさんにしか撮影することはできないと思います。

ぜひ実物を見ていただきたい作品の一つ。
それが叶わない方は、ぜひ動画でご確認ください。

実際に作品を目にすると、一番下に、薄っすらとした光が見えますが、それは肉眼でも近くに寄らないとわからない位の小さな街の明かりです。

「町は、まだ眠っています。この『早暁』という時間帯に、昔の戦国武将は相手を攻めに行ったのです」と、ロッキーさん。

なるほど、まだ寝静まっている筈のそのタイミングで、戦を仕掛けるわけです。
作品の、小さな町の明かりを見ながら、その当時の武将の気持ちがよぎっていきます。

ロッキーさんは、続けておっしゃいます。
「一日の営みが、やはり朝から昼、夜と、みんな一生懸命、生き物が生きている、がんばっている……。それから宵が来て夜になって、その後深夜になるという……、日本には、日本語の一日には24個くらいの言い方があります」

日本語の表現は、本当に細やかで、それらの時間を意味する言葉以外にも、さらに細かく表現できるように、たくさんの言葉を生み出している日本特有の言葉たち。

これが英語であれば、“Early night” “ Early morning”
実にシンプルですが、味気ないです。

「この時、林道を走っておりましたら、天空にお月様がお船になって浮かんでいました。これが、20数年前の10月の夜明け前、私が林道を走っていて、しかもフィルムで撮った写真です。だからリアルなこの深い色が出て……」ロッキーさんは、当時に思いを馳せます。

この作品の上のほうに小さな三日月型のお月様が船のようにポツンと浮かんでいいます。
濃紺の、まだ開けきらない夜空。
天空の方はまだ夜空ですが、そこにぽつんと、真っ白にクッキリと三日月が輝いているのです。

このコントラストと、富士山の裾野の、明け始めたオレンジの空のグラデーションが、絶妙。
縦型の作品のど真ん中に、富士山の頂上と三日月が揃っていますから、横方向に広がるオレンジの帯とが、見事なバランスを取っている作品なのです。

「ベッドサイドにこれくらい小さいサイズにして置いたらいいんじゃないかと思って作りましたら、えらく人気をいただきました」と、ロッキーさん。

ロッキーさんの作品のキャビネ版の写真はすべて横型の中、縦型のフレームは確かに珍しいのです。

富士山では、10月から11月にかけて雪が降ってくるそうです。

「車で行ける人は、櫛形林道をお勧めします。櫛形林道というのは富士山から大体60km位で、高度が1200m位の林道なんです。街の麓から周りの山につながっています。30分ぐらい車を走らせると行くことができます」と、ロッキーさんが撮影スポットを教えてくださいました。

「条件の良いときには富士山がくっきりと見えます。ただ雲が多い時には富士山が隠れてしまう林道なんですです。この日はラッキーでした。ふもとまでちゃんと見えましたね。この後もう少し明るくなって夜明け前が『黎明』という時間になって、『黎明』の後に周りがもっと明るくなって、『曙』が来るわけです」

この時間帯は、多くの方は眠っていらっしゃるので、ご存じないかもしれませんが、夜明け前のその変化というのは、実に美しいのです。

ロッキーさんは、こんな風におっしゃいます。
「僕は講演の時にたくさんの人にお勧めしてるんです。『夜中にトイレに起きてください。窓を開けてください。窓から外を観てください。マンションからでもいいです』と。窓の外、自然が見えなくてもいいけど、空が劇的な変化をやっているんです」

まさに『天空ショー』です。
ひと時たりとも同じ色にとどまらないのです。

「ずっと前に新聞社がアンケートをとりまして。『去年、夜明けを見たことがある人』、極めて、いなかったんです。子どもたちも知らないんです。一番空が綺麗な時間帯なのに、もったいない。実は宝物が毎日刻々と色を変えています。それを知っておくだけでも自然に対する畏敬の念、想像力は全然違ってきます。日中の活発な活動の昼間の色から、夜になって、深夜になって、それからみんな眠り静まって、また立ち上がってくる色。それを感じてほしいです」と、ロッキーさんからの素敵なメッセージです。

詳しくは、動画をご覧くださいませ。


■ ロッキー田中 ときめきの富士 公式ホームページ
● 皆が見たことのない、なんとも言えない素敵な富士山の写真が、ここにあります。

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現代の北斎 ロッキー田中の『ときめきの富士』一覧