お正月の初夢といえば『一富士二鷹三茄子』と、その真っ先に登場するほど日本人にとって特別な存在の『富士山』ですが、今回のロッキーさんの作品も、ときめきの富士の中でも、スペシャルな作品です。

その名も、『白峰連山』。
美しいブルー一色の中に真っ白い『富士山』が、どーんとそびえ立っている写真です。

ロッキーさんのお写真にしては珍しい空撮の写真です。
神秘系・幻想的で心揺さぶる写真が多い中、これはまさに、見るからに堂々とした日本一の富士山の姿、『THE・富士』と言う感じです。

「通常よく見る写真では、九州へフライトする時などに撮った富士山の写真を、皆さん見ますよね?でも、これだけ克明になるほど近づいた写真と言うのは、実は旅客機では撮れません。軽飛行機を貸してくださる方がいたのです」と、おっしゃるロッキーさん。

そう、旅客機の窓からでは、これほど富士山に近づいた写真は撮れません。
しかも、分厚い窓越しですから思うような写真は撮れないのです。
そこで、軽飛行機からの撮影ということなのです。

そして、ロッキーさんのお話は続きます。
「長年富士山を撮っておりますと、この裾野の力、これでいろんな人に知り合うという最大のチャンスが来るんです。360度、色々なところで色々な方がいらっしゃいます。その延長線上にいてくださったのが、宇宙飛行士の向井千秋さん。その先生であられる、NASAの宇宙工学の権威である梅川荘吉博士という方がいらっしゃって、6人乗りの軽飛行機・ビーチクラフトをお持ちだったんです」

なんと、向井千秋さんや、NASAの博士!!
さすが『ときめきの富士』とその作者であるロッキーさん。
引き寄せが半端ないです。

その梅川博士が所有されていたという軽飛行機は、6人の共同所有だったそうですが、こうしたご縁のつながりで、撮影のために飛ばしてくださることになったそうです。

とはいえ、経費はかかりますし、お天気は時の運に任せるしかない中での撮影。

「その日いきなりお願いしますというわけにはいきませんから、いろんなものが一致して初めて可能です。一週間前にお願いして、その日が晴れるかどうかは、全くの別問題なんです。お小遣いはとてもかかります。最初3回、快く飛んでいただいて、3回とも天候悪化で引き返すことになりました。近くまでは行きましたが、上空は乱気流なので戻ったほうがいいということで、3回飛んで、私の貯金も底をつきました」と、ロッキーさん。

なんとも、気の毒な状況です。
ところが、やはり天は味方してくれるのです。

「これもいい勉強代だと思って諦めようと思った時に、やはりどうしても諦めきれませんから、必死でお金をかき集めて先生に迷惑のかからないように、もう一回お願いしたんです。そこで、先生が『できるまでやりましょう』と言ってくださって、4回目のフライトが実現しました。そしてその日が1月の6日。お気づきになりませんか?雪がいっぱい乗っていますね?今年の1月6日、雪がなかったですよね?年々、富士山の頂上の雪は減ってきてるんです。日本海側は雪が降っています。富士山でも夜中に雪が降るんですが、朝には消えるんです。その理由がありまして、富士山の表面から地下6メートルのところにツンドラのような塊があるんです。氷床(ひょうしょう)というのですが、それが十数年前に溶けてしまったんです」と、衝撃的なお話が……

つまり、上に雪が積もる元となる『氷床』が消えてしまったので、雪が降っても風で飛んで消えてしまうのだそうです。
これは、人が登りすぎたことによる自然環境の悪化や、私たちの暮らしがものすごく便利になったことの反動で、地球温暖化が進んだりしたことが複合的に重なって、『富士山』に雪が積もらないという現象を引き起こしているということなのです。

これだけ立派な富士山に雪が積もらなくなった原因は、私たちだったのです。

さてさて本題の、『白峰連山』の撮影、4回目のフライトです。
「先生がぐるっと頂上の上を一周するわけです。上空では爆音ですから耳がほとんど聞こえないんですが、前の席から『ロッキーさんどうですか?』と叫んでくれました。『もう一周お願いします』と答え、角度が決まったら、『ここにします』と言います。そこで飛行機は水平飛行から90度傾けて、反転するわけです。伊豆方面に戻るのです。伊豆方面からまた反転して水平飛行になって、富士山めがけて突っ込むわけです。ブワーっと近づいていく、角度が合わない!『もう一回』と、またやるわけです。さっきまで水平に見えていた地面が横にあるわけですから、私は倒れそうになりました。それを9回繰り返したら、ついにある角度にいたったんです。それが富士山の頂上に雪がきれいに乗っている姿と、その向こう側に南アルプスが完全に水平に入ったんです」と、力説してくださるロッキーさん。
お話をうかがっているだけでも、手に汗握る気分になります。

そう、結局9回も急旋回を繰り返した上で、美しくも荘厳な『富士』の姿が『白峰連山』という名前を持って世に送り出されることとなったのです。

この作品のもう一つのすばらしいところは、『富士山』の背景に、見事なほどに真一文字に南アルプスが写っているところです。

「今までたくさん富士山の頂上の航空写真はありましたが、これだけ完璧に揃ったものが実はなかったということに、私は気づきました。『やったー!』と思いました。『白峰連山』という名前にしたのは、広い意味で、富士山が連山を従えているという、まさに『日本一』という意味でつけました」と、ロッキーさん。

頂上の火口だけではなく、二百数十年前に、富士山が噴火した跡までもが鮮明に写ったこの『白峰連山』は、凛々しく力強い、生命力を感じます。

「教訓もいただきました。予算は別にして、『あきらめなければ扉が開く』ということを、富士山が教えてくれました。『志高く、堂々と生きましょう』。富士山が私を応援してくれるという気がします。そしてこの作品は、私が独立したのが24年前で、その翌年の1月6日に出た奇跡的な、だいぶ昔の富士山です。あの頃はしっかり雪があったんです。1月6日は……。年を追うごとに雪が少なくなってきたんです。『氷床』がなくなったから雪が積もる要素がなくなったんです。あと数百年行くと富士山が緑の山になってしまう可能性があります。富士山が今、美しい姿を見せてくれているから、『どうかこの姿が残るように考えてくれ』と言ってくれてるような気がします」と、とても大切なメッセージをロッキーさんからいただきました。

そして、とうとう二度目の緊急事態宣言が出てしまいました。
今は身動きが取れなくなっていますが、色々と振り返りができるチャンスでもあります。
ここで生活を改めて、富士山に雪が積もるようにしていかないと大変なことになります。
ロッキーさんも、行動自粛が叫ばれている今は、富士山には行かないとのこと。
「今はいいよ」と言われている感じがするそうで、「時期が来たら呼んでくれるでしょう」と、ロッキーさんは感じておられるようです。

できるだけ早く、状況が良い方向に変化し、富士山からロッキーさんが呼ばれる日がやってくることを祈ります。

詳しくは、動画をご覧くださいませ。

■ ロッキー田中 ときめきの富士 公式ホームページ

● 皆が見たことのない、なんとも言えない素敵な富士山の写真が、ここにあります。

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