新型コロナが世の中に及ぼした影響は計り知れませんが、ここにも悲しい影響を受けた、とある作品が……
昨年、上演予定で『ラジオdeハピネス』でもご紹介予定で収録まで終えていたのに、あえなく中止。
企画をされていた、岩瀬晶子さんにお話を改めてうかがいました。
「恵比寿の『シアター・アルファ・東京』という、新しくできた劇場なんですが、去年やる予定だった『月虹の宿』という作品を上演いたしまして、その後、栃木・宇都宮に翌週行って、その後、富山にも行きまして、最後は横浜でも。結構長丁場なんです」と、岩瀬さん。
『月虹の宿』は、昨年8月に上演予定だったのですが、感染者が激増した状況を鑑みて、この時期の上演は中止せざるを得ないということに。
そして、今年の8月のリベンジという感じでの上演なのです。
「『げっこう』っていうのは、『月』に『光』ではなく、(月に)『虹』と書きます。ちょっと山の中にある温泉宿が舞台になっていて、そこで姉妹が営んでいるんですけど、アメリカにずっといた次女が帰ってきて、色々、それまでの確執とかなんとかが出てきて……という話ではあるんですが、ざっくり言うと。その中にちょっと安楽死の話だったり、LGBTQの話だったり、社会的なテーマを盛り込んでいます」とおっしゃる岩瀬さんですが、なんとこの作品の脚本もご自身が書かれていて、出演もなさっています。
「柴田理恵さんがゲストで出演してくださいます。普段の私たち『日穏-bion』の世界観に、どういう風に馴染んでくださるのか楽しみです。オーラがある方ですし……。『笑って泣ける』っていうのが一応、私のやっている劇団のキャッチフレーズです。大いに笑っていただいて、最後にグッときて心が温かくなるような、そんな作品です。たくさんの方に見ていただきたいと思います」とのこと。
岩瀬さんの手がける作品は、笑いの中にも、ご覧になった方の心に投げかける、きちんとしたテーマがあります。
しかし、動画をご覧いただけば一目瞭然なのですが、天は一人の人間に『二物』どころか『何物』も与えています。
美しさだけでも群を抜いている上に、俳優であり、脚本家であり、プロデューサーでもあるのです。
そう、映画まで手掛けているのです……
この動画が公開される2022年3月20日から22日までの3日間、高円寺にある『シアターバッカス』という映画館で上映されます。
「去年撮った『月の海』という中編、45分の映画なんですが、その作品を上映します。それって元々、日穏-bionが2回ほど上演した『月の海』という舞台版があるんですけども、ちょっと設定とか色々変えているんですが、それを元にした作品で、オリジナル版は1時間40分ぐらいあるんですけど、舞台の映像と映画版と両方上映しようと思っているので、見比べて楽しんでいただけるんじゃないかなと思います。もともと、一番最初は役者として活動したんですけども、なかなか自分が『出たいなぁ、伝えたいなぁ』って思うような作品に出会うっていうのが難しいんですよ。特に、ちっちゃなところでやっていたこともあって……。『だったら自分で作ってみよう、書いてみよう』というところから始まっているので……」と、岩瀬さんはおっしゃいます。
確かに、役者さんが「この作品に出たいな」と思っても、オファーがなければそれまでです。
逆にオファーがあっても、「私出たくない」ということもあったりするかもしれません。
「何かを伝えたいっていう思いが一番初めにあったので、役者を始める時に。書くということはあまり得意ではなかったんですが、私の中では必然だったのかなという気がします」と、岩瀬さん。
2時間以内、1時間40分位から50分の間が一番理想という枠の中で作り上げていく作品。
この時間の中に納めなければいけないので、どんなに想いが溢れていようとも、割愛しなくてはいけない場面も出てきます。
稽古の段階で、元の脚本からも変化していきます、
「それは、稽古しながらだったりとか、伸ばしたり縮めたりっていうのは、そういうその段階では結構ありますので……、再演でない限りは、結構変えていきます。やはり役者から出てくるものだったり、演出家の意見もそうですけども、そういうもので、どんどん進化していく感じが好きなんです。それを作り上げていくっていうのが舞台の醍醐味でもあるんですけど、そういう意味では、とても色んな意見を聞かせていただくのはウェルカムですし……。毎回違うことを本番中(アドリブ)にやられてしまうとなかなか周りも困っちゃいますけど、稽古中はいくらでも色んなものを持ち込んで貰って……」と、おっしゃる岩瀬さん、実に楽しそうです。
参加された全ての方の力によって、ひとつの作品が進化して完成していくというのは、『舞台』ならでは面白さなので、作り手にとってはやめられない魅力なのです。
「やはり舞台にしても映画にしても、ひとりではできないですから。例え、ひとり芝居だとしても、そこにはスタッフさんとか色んな人が関わっていて、お客様が、最終的にいないと成り立たない芸術なので。ほんとにみんなで作っているという感覚が私は楽しくて、それで続けています。そして、お客様の空気感でその日のお芝居が変わりますので。尺も変わりますし……」と岩瀬さん。
もう少ししたら稽古が始まるのだと思いますが、今年の空気間で、お芝居がさらに進化していくのでしょう。
役者さんのお一人がスケジュールの関係で参加できなくなったそうですが、その方以外は、スタッフの方も全員、昨年の元々のメンバーで上演できる準備が整ったそうです。
さらに、今年の岩瀬さんは、色々とチャレンジなさっているようです。
「ちょっと映画も最近出演もしていますし、海外の作品とか……。映画は去年、短編を作ったので、今年はちょっと長編を制作しようとして動いているところです」と、製作されたり出演されたり、本当にマルチです。
出演された映画は、なんと、DVD化されました!
「そうなんです。『MINAMATAーミナマター』っていう、ジョニー・デップさんが主演している、アメリカで作られた水俣病を題材にした映画なんですけど、ちょうど先月からDVDが発売されて、今レンタルショップに並んでいますので、よかったらぜひ観てください」とのこと。
活躍の場が広がり続けている岩瀬さん、目が離せません。
『MINAMATAーミナマター』は、動画サイトでも見られるようですので、ぜひこの機会にご覧いただきたいです。
詳しくは動画をご覧くださいませ。
岩瀬さんが主宰する劇団【日穏 -bion-】
日穏 -bion-
岩瀬さんも出演されている、ジョニー・デップ制作/主演の『MINAMATAーミナマター』
『MINAMATAーミナマター』