ロッキー田中さんの作品の中には、まるで筆で描いた『絵画』のように見える仕上がりの写真が何点かあります。
グラデーションの具合と雲の加減で、そのように見えるのですが、そんな繊細な作品が撮影できるのには、秘訣があるのでしょうか?
「富士山の神様が、時々私にこういう風に、ちょこっと出してくれるような気がして感謝しているんです。中央高速の長坂のインターチェンジを降りて、しばらく八ヶ岳の麓の街の方に走っていくと、開けている場所があるんです。周りに田んぼがあったり森があったり、近くに農協さんの倉庫があったり、その辺でちょっと一回休んで、後ろを振り向いたら、はっと息を呑むようなシーンが始まっていましてね」と、あくまでも、神様のおかげとおっしゃるロッキーさん。
とはいえ、シャッターチャンスは一瞬です。
普通にスマートフォンで撮影するときでさえ、ちょっとマゴマゴしていたら、チャンスは通り過ぎていきます。
「30秒でどんな時でも撮れるようになっているんで……。すぐ三脚を立てて撮れたんだけど、これが、そうだな……夜明けの色はこんなに美しい」と、その時を振り返ります。
第93作の『夜明のむらさき』というタイトルのこの作品は、色の中でも一番高貴な色と言われている、紫の淡い色調のグラデーションで構成され、ずっと見ていたいと思わせます。
「これが御坂山系(みさかさんけい)っていうのかな……。甲府から北の方は、富士山が肩から上を出すような感じなんです。裾野まで見えないんですが、これは八ヶ岳の麓から見ると、裾野まで見えているような錯覚になりますよね?」とおっしゃる通り、色合いのせいもあって、富士山の麓に見える山のあたりからずっと低い山並みが被っていて、まるで富士山の裾野のような感じに錯覚する感じです。
「私は富士五湖も大好きで、皆様方が遊びに行く時には勿論、雪なんかは注意をしまして、走行が楽な時には、八ヶ岳の麓へいく事をお勧めします。富士山がとても綺麗で高く見えるんです。周りに障害物がないですし……」と、おススメポイントを教えていただきました。
この作品の撮影日は2月26日。
ちょうど今頃の季節に撮影されたそうです。
「そしてこれが富士山の色変わり、千変万化と言いまして、刻々と変わっていくんです。一番美しいのは、夜の明ける前から夜明けを迎える、そのあたりが一番美しくて、その後は太陽が昇っていって、煌々と一帯を照らして行きますから、景色の全てが明るくなってしまうんです。グラデーションが出るのはこの時間帯・夜明け前後ですね」と、撮影のタイミングまで、教えてくださいました。
そして、今回はもう一つ別の作品もご紹介くださいました。
さきほどの作品の撮影ポイントから数キロ離れたところにある八ヶ岳の高原大橋から撮影されたとのこと。
「120メートルの絶壁の上にすごい橋がありまして、車を止める事ができないから、手前で止めて歩いて行って撮るんですが、これは5月の11日、若葉が萌え始めたころです」と、ロッキーさん。
タイトルは『いのち萌える』、第87作。
同じ富士山とは思えないほどに、こちらの作品は新緑が鮮やかで、まぶしいほどです。
「条件の良い時は、こういう風に山並みの向こうに富士山が顔を出すんです。この写真ですけど、この、目の前に立つと、景色の目の前から風が吹いてくるような気がしますからね。これは「命燃える、命輝く時」という意味合いですよね。
「まさに生きとし生けるものですね。多くの人は山岳写真としての富士山を思い浮かべる人もいると思うんですが、私は、険しい周りの山に登って富士山を撮るって事はちょっと自分には難しいので、それは専門家に任せて、私はなるべく麓の方から、見た事がない美しい姿を収めるようにするんです」と、ロッキーさんはおっしゃいます。
どの作品も、いわゆる富士山の写真とは異なる、独自の視点で撮影された『ときめきの富士』
しかも、ロッキーさんご自身が車で移動され、その後は、少しの徒歩で撮影ポイントにいらしているので、撮影ポイントには、どなたでも行くことができるのです。
もちろん、季節や時間帯が重要なので、同じ景色には、なかなかお目にかかることはできませんが……
「シーンは一期一会です。私は一度ここを通った時に瞬間的にイメージするわけです。どの時期の何時ごろが一番美しいんだろうか?と……」と、ロッキーさんがご自身の中に構築されているデータベースと直感によって、出来上がる作品のイメージができるようです。
「待ってる写真家ではありませんから、いつも東京にいるわけですから。そして気象条件を研究して、『そうだ。来週の半ば位には緑の色づきも良くなってくるから、その早朝の時間に行ってみよう。5月11日だから、連休の後だ』」ということです。
他の方に真似ができない技です。
そうして出来上がったこの作品は、新緑の輝きが本当に生き生きとしています。
やはり緑は、心を落ち着かせます
「この二年間、皆さん大変でしたよね?そういうモノがあるのかどうかを含めてですね、誘導されてしまった人たちも多いと思うんです。ただ、常に希望を持って、そして心を奮い立たせるためには、自然と共生していくのが一番いいんです。自然にすべての答えがありますから」と、ロッキーさんはおっしゃいます。
暦の上ではもう立春を過ぎましたので、あと一息。
そしてさらにもう一歩先へ行くと、こういった景色に巡り会えるかもしれません。
ちなみに、全くテイストの異なるこの二つの作品ですが、実はそれぞれの下、富士山の裾野が広がっているように見える山並みは、一緒の山並みなのだそうです。
「こういうのは八ヶ岳の麓だけなんです」とのこと。
角度が変わるとこんなにも違う景色になるというのは、360度色々な所から、色々な景色で楽しむことができる富士山ならでは!
「そこにときめきがあるんです!」と、ロッキーさんが締めくくってくださいました。
詳しくは動画をご覧くださいませ。
■ ロッキー田中 ときめきの富士 公式ホームページ
● 皆が見たことのない、なんとも言えない素敵な富士山の写真が、ここにあります。