尺八奏者のブルースさんの収録の舞台となった成城学園前にあるサローネ・フォンタナのオーナーである、高江洲禮子(たかえすれいこ)さんが素晴らしい本を出版されたとのことで、お話をうかがいに、改めてサローネ・フォンタナに足を運びました。

タイトルは『UMUI:ウムイ』、沖縄の言葉です。

「直訳すると『想い』なんですけど、もっと深い魂の叫びのような意味です。私たちはうれしいにつけ悲しいにつけ、歌とか踊りとか表現していくんですけれども、その『想い』から来るんです。」と。禮子さんはおっしゃいます。

日本語の『オモイ』と響きが似ているので、出発点は共通しているように感じますが、『ウムイ』の原点は、もっと深いもののようです。

そして、その深さを目で見えるようにしたともいえる写真集が、『UMUI』
一目見てその重みを感じます。

装丁から中身の紙にいたるまで、作り手のこだわりが伝わってくる出来栄えなのです。
写真はすべてモノクロですが、単なる白黒写真というレベルではありません。

『湿版』という、ガラス板を溶液に浸し、そのガラス板を感光させて撮影した写真なのです。

「幕末のころにペリーと一緒に来た写真と同じ方法、同じカメラで撮っています。幕末、100年以上前のカメラで撮っています。」と、禮子さん。

この撮影方法だからこその味わい深い写真といえます。

現代の写真は鮮明に撮ることが当たり前。
デジタルで撮影される今の写真は、シャッタースピードも短く、その場ですぐに仕上がりが確認できます。

『湿版』で撮る写真は、そうはいきません。
明るい場所でさえ、数秒、薄暗い場所の場合20秒ほどの時間をかけて露光させます。
しかも、手探り、カンに頼っての撮影。

被写体は、息を止め、同じポーズでじっとしていることが求められるので、風が強い日の撮影は本当に大変な上、仕上がりを確認するためには、さらに30分という時間が必要なのだそうです。

こうして一枚ごと、時間をかけて作り上げていき、写真一枚につき一枚のガラス板が増えていきます。

写真を撮影されたのは、エバレット・ブラウンさん。
『UMUI』の中の文章もエバレットさんが書かれているそうで、禮子さん曰く、「やはり写真だけではわかり切れないものがあると思いますので、『ウムイ』とは、そんな言葉と一緒に『ニライカナイ』と言うんですけど、海の向こうから神様がやってくる、海の向こうに帰り、そこからまた陽が登り……」

言葉にしきれないものが、『写真集』という形で表現されているといえる一冊です。

実際に、約2年前に、禮子さんとエバレットさんのお二人の会話から、この本はスタートしています。

「沖縄のいろんな話になりまして、「それをどんな形であなたは残してるんですか?」と言われた時、何も残してないなと。「子どもとか孫たちにどうやって伝えるんですか?」と言われ、何か伝えていきたいと思った時に、エバレットさんに「写真という形がいいと思いますよ。」と言われました。」と禮子さんは振り返ります。

独特の文化と歴史を持つ、『沖縄』
しかしながら、県外の人間にとっては、観光地としての認識が強く、文化的な裏付けには、興味が及ばないというのが実態ではないでしょうか。

「私も子どもたちにも伝えきれていませんし、母や祖母たちから伝わって来たものを、私がいなくなったら本当になくなるんだと思いまして、やはり海の美しさや芸能だけでなく、多くの想いを形にしていきたいなと思いました。」と、禮子さんもおっしゃいます。

中の写真が、ガラス板の形そのままなので、その写真をよりよく見せるためにも、正方形

表紙を開いてすぐのページには、沖縄の月桃(ゲットウ)という植物から作られた、月桃紙を使うというこだわりよう……

出版社に頼らず、思う通りの仕上がりを求め、今の写真や印刷物からは考えられない作り方で誕生しているのです。
こうした背景に心を向けると、この本に込められた『想い』をより深く感じとることができます。

だからこそ、『UMUI』は、手にしたときずっしりとした重みを感じるのかもしれません。

「出版社を置いてないものですから、直接ご注文いただくという形になります。今はいろんなチラシを作って、Facebookですとか、ご案内できるように考えています。」と、禮子さん。

お一人お一人にお伝えしたいという強い思いから、手渡しに近い販売を禮子さんは考えており、伝わったその方から、次の方へと広がることを望んでいらっしゃいます。

価格は、7,000円
もちろん、サローネ・フォンタナにお越しになって直接購入することもできます。

一枚一枚を、額に入れて飾りたいような写真が詰まった『UMUI』
本自体も、絵になる一冊なので、ぜひ一度実物に触れていただきたいと思います。

詳しくは動画をご覧くださいませ。

写真集『UMUI』をご希望の方は、こちらからお問い合わせください。
https://www.facebook.com/salonefontana/