町中いたるところに、『音楽』はあふれ、音楽が好きで日々の生活の中に溶け込んでいる、という方は本当に多いと思います。
しかし、それらの『音楽』の中には、『邦楽(古典的な和楽)』は、ほとんど含まれていないのではないでしょうか?
しかも、生の演奏を聴くチャンスはめったにないと思います。
でも、実際に聞いてみると、その音色は、日本人の中にずっと受け継がれている音であり、何かが呼び起こされるような、凛とした空気を感じます。

この大切な文化を守り、発展させているお一人である、福原流の笛方、福原寛さんにお話をうかがいました。
福原寛さんの横笛は、聴いている方の心の奥に響く強さと、透明感のある清らかな音色で、多くの方を魅了してやみません。
さらには、ステージ上では、その佇まいまで美しく、ファンの方が多いのもうなづけます。

「舞台の所作という言い方をしますが、動きとか型を結構大事にしています。師匠からもやっぱり、演奏も勿論大事なんですが、舞台上の型ですとか動きは、曲と直結するものなので、「気をつけないといけないよ。」とよく言われました。古典なんかは特に大人数で演奏しますから、それぞれが気をつけてみんなで作り上げていきます。」と、福原寛さんはおっしゃいます。
先日拝見させていただきました国立劇場での演奏会は圧巻で、まさに演奏者すべての方(おそらくは裏方の方も全員)で、隅々まで神経が行き届いた素晴らしい舞台でした。

福原さんは、『笛方』という呼び名で、横笛の奏者ですが、福原流の中には、他にも楽器があるそうです。
「もともとは囃子とか、鳴り物という括りで、打楽器とか、沢山色んな種類の打楽器があるんですが、それと笛を含めた流儀のひとつなんです。その昔は隔てもなくて、同じ人が、前回の舞台で鼓を打っていた人が、次の舞台は笛を吹いたりと、そんな感じだったんですが、私の師匠(人間国宝の四世宗家、寶山左衛門師:六代目福原百之助に師事)は、笛が特別に素晴らしい方だったんですが、笛だけ特別扱いみたいな括りにしちゃったんです。ですから、その流儀の中で、打楽器類をやる方と笛を吹く人、というので、分かれたんです。」とのこと。

そして、笛をお持ちいただいたので、間近で拝見させていただきました。
すると、「ちょっとザラザラっと……。「そんなにザラザラ入れて大丈夫か?」とよく言われますが、これは別に家にあるのをたくさん集めて持ってきたっていうわけではなくて、だいたい、いつもこれくらい持ち歩いていまして、まんべんなく、結構使うんです。」とおっしゃって、まさにザラザラという言葉がぴったりな様子で、たくさんの笛を布の袋に入れてお持ちくださいました。

このたくさんの横笛を、一つの曲目の中でも持ち替えてお使いになるのだそうです。
一本だけの時もあるそうですが、多い時は6本も使われるとのこと。
また、横笛には2種類あるそうで、「黒っぽい笛が『能管』という笛なんですけど、名前のとおり、能で使っている笛を歌舞伎の中でも使うんですが、それとあと一般的な『竹笛』、『篠笛』。祭囃子の中でも使われています。この2種類なんですが、沢山あるのは『篠笛』の方です。長さの違う笛がたくさん入っています。」と福原さんは、こともなげにおっしゃるのですが、多くの笛をどのように使い分けているのか、皆目見当がつきません。

見事なまでのプロフェッショナルな福原さんですが、演奏をされるだけではなく、ご自身で作曲もなさっています。
その中でも、ひときわ心惹かれる曲があります。
その名も『宝船』
なんと、タイトルの『宝船』に乗った『七福神』の、七人のそれぞれの神様ごとに曲を作られているのです。
しかも、今年、2023年の11月11日を皮切りに、曲に合わせた舞と共に楽しむことができる舞台がスタートするとのこと。

実は、このステージは、福原さんと共通の知人である、田中丸さんという女性が長年温めてきた企画で、とうとう今年の秋に実現するのです。

「『宝船』を聴いていただいて、「これをどうしても皆さんに広めたい」と仰っていただいて、ずっとその構想を長く練っていらっしゃって、やっとここへ来て舞台にかけられるっていう感じになったんです。有難いことです。」と、うれしそうに語る福原さん。
ステージは二時間くらいを想定しているので、『宝船』以外の曲目もご披露くださるそうです。

「笛の曲が中心となるんですが、こちらは古典の曲なんかも取り入れて、それを舞っていただこうと……。」と、福原さん。

場所も素晴らしく、谷中にあるお寺でまさに『七福神』をお祀りしているお寺です。
本当に神がかっていて、なかなか決まらずヤキモキしていた会場探しだったのですが、この収録の前日に、不思議なご縁で決まったというミラクルぶり。

JR日暮里駅を降りてすぐにある、『天王寺』という大きなお寺で、『谷中七福神』の中の『毘沙門天』を祀っている、歴史のある寺院です。
特に、『谷中七福神』は、都内にいくつかある『七福神』の中でも、江戸最古といわれており、まさに、この企画にうってつけの場所です。

企画者ご本人は、この企画を宇宙に向けて発信したいという大きな志で作っているようで、イベント自体の規模は小さくとも、大きなエネルギーで平和を願っているのです。

実際、『七福神』という神様自体、インド、中国、日本と伝わってきてるものですし、ほんとに今の閉塞した世の中を打ち破っていくために、とてもいい感じの『宝船』に皆さんに乗っていただけるんじゃないかなと思います。
今から、11月が待ち遠しいです。

また、動画の中では、短いですが福原寛さんに演奏もしていただきましたので、ぜひご覧いただき、演奏をお聴きいただきたいです。

また、ご紹介させていただいた『七福神』の演奏はYouTubeにも挙がっているので、実際にお聴きいただき、11月11日とそのあとに行われる予定の舞台にも足を運んでいただけたら嬉しいです。

まずは、動画をご覧くださいませ。

福原寛さんのサイト▶福原流笛方 福原寛のホームページ