空の色は、刻一刻と変化し様々な色合いを見せてくれますが、この方の写真の中では、通常みることがないような、幻想的な『色』が『富士山』とともに、一枚の写真の中に映し出されます。
そして、『色』として私たちの前に姿を見せてくれることには素敵な秘密があることを、ロッキー田中さんが教えてくださいました。

今回の作品の名前は『紅明(べにあかり)』というタイトルで、作品のナンバーは、第一作。
赤と黒の世界だけですが、色に吸い込まれそうな感じです。
その赤が、ただの赤ではありません。
自然の中で、『赤』という色のグラデーションが、こんなにも変化して、深い色合いが出るとは、ミラクルです。

「私がまだサラリーマンだった頃、数十年前ですが、富士山が大好きで、初期に出た作品で、この色に出会った時は身が震えました。これは宇宙空間に浮いているような感じがしますね。富士五湖の五つある湖の中で一番小さいのが精進湖。あそこは静かで独特の雰囲気があります。真正面が富士山で、手前が青木ヶ原樹海、こちら側に山があって、そちらにも山があって、背中にもあって……。この、谷間のような所に小さな湖があるから風が吹かないんです。大きな波が立たないし、未明から夜明け直前までは、本当に鏡のような感じです」と、その当時を振り返るロッキーさん。

たしかに、自然のままフィルムに収めた作品に、このような素晴らしい色が表現されるとは驚きです。
この作品は、2月半ばの夜明け前、4時から4時半くらいに撮影されたとのこと。
そして、ロッキーさんからこんな質問が飛びだしました。

「では、ここで質問です。一日の時間を日本語で言ってみてください」

今時は使われることが少なくなってしまいましたが、日本語には、とても細かいニュアンスの単語が存在しています。
時間を表す言葉もたくさんあり、朝だけでも『夜明け』、『未明』、『朝ぼらけ』、夕暮れ時ですと、『黄昏』、『逢魔が時』など、時間に関する単語は、ちょっと調べるだけも、ゆうに100を超す言葉が出てきます。

「一日には24個の名前がついています。『深夜』真夜中ですね。『丑三つ時』、これも深夜。そして、『未明』に至るわけです。遥かな地平線に光が少し入ってきたころ、これが『暁』。その『暁』など、光が空全面に広がってきた時、これが『黎明』。美しい言葉ですね。新しい夜明けが始まるよという予感です。日本語ってなんて綺麗なんでしょう。私が一番好きなのは、この『未明』から『暁』、『黎明』、『夜明け前』にいたるまでの静かな時で、ここに『ときめき』が隠れていると信じています。その24の名前がついている、それぞれの時間の一番美しい富士山を撮っていきたい。日が昇ってしまえば、光が、太陽が、全面を照らしますよね?全て隠されてきたものも、明らかになってしまいます。それは美しいけれども味気ない」とおっしゃる、ロッキーさん。

たしかに、光によって見えるものは変わります。
部屋の中であっても、照明器具の光源次第で同じ部屋とは思えないほどの変化があるわけですから、太陽がくれる光の当たり方で、主役である『富士』が、いかようにも違う顔を見せてくれるのは当然です。
とはいえ、こんなにも奥行きのある色味を引き出せるというのは、ロッキーさんの力があってのこと。

そして、もう一つ重要な秘密がここにはあったのです。

「私がサラリーマンのころ、フィリピンのピナトゥボという火山が爆発しました。粉塵がすごくて成層圏のところまで来ました。3年間粉塵が地球を廻っていました。その頃は劇的な夕焼け・朝焼けが多かったんです。30数年前ですが、その頃、私はこの目の前に立つことができてとても幸せでした。『ときめきの富士』は歴史的に残していく一作一作だと自分に言い聞かせていますから、その歴史的な瞬間に立ち会うことができたと思っています」と、ロッキーさん。

なんと、火山の噴火による粉塵が、フィルターがわりになって、空気の中の粒子に乱反射してこのような朝焼けが起きたというのです。
自然現象の妙と言いますか、様々な現象の一つ一つがなければ、この色は登場しなかったということなのです。
本当に美しい赤です。単に赤と一言では伝わらない『赤』
ぜひとも、実際の写真を見ていただきたいと、切に思います。

ロッキーさんは続けておっしゃいます。
「富士山の写真を撮り始めると、こういうシーンに出会うことがあるんです。そうすると、また会いたくて行きたくなるんです。ですが、そうそう出ないんです。だから私は何回もあてもなく行って待つのはやめようと思いました。前から申し上げているように、どういう自然条件の変化、天気の変化の時に、どういう色が見えるのか?ということを知ろうと思ってずっと観察してきて、大体少しわかるようになってきました」

まるで、職人さんのように『富士山』についてわかるロッキーさん。
実際には、空振りもあるそうですが、あてもなく待つのではなく、「明日のあの場所、あのシーンに会えるな」と思って行ったほうが間違いなく会えるとおっしゃいます。
それは、今までの経験と『富士山』から届くインスピレーションの賜物。
夜明け前とは言え、こんな微妙なピンクがかったバラ色や、ちょっと紫も入ったりした『赤』に染まる、まさに『ときめきの富士』の第一作。
そうでなければ、こうした作品が生まれるはずもないのです。

「この色が日の丸の色です。こういうシーンっていうのは、いろんな自然条件とか、そんな噴火であるとか、光の条件とか天気の具合とか、いろんなことが加味されてできた瞬間ですから、あてもなく富士山に行っても、こうした色は100%出ないんです。だから私は今、そこにいなくてもいいのです。
可能性のある時に行く。
もう一つは、地球がどんどん温かくなってきてしまっています。
夜中・朝の温度がそんなに変わらなくなってしまっています。昔、夜明け前は寒かったんです。今は普通の格好にプラス1枚で立っていられるんです。だから、色が出ないんです」と、ロッキーさんはおっしゃいます。

ここにも、地球温暖化の影響が出ているとは残念なことです。

「この写真のメッセージは、『未明』から『黎明』にいたります。もうすぐ『夜明け』になります。新しい夜明けやってがくるよ。ということを言いたいのです」と、ロッキーさんからメッセージをいただきました。
まさに、その通りだと思います。
太陽の光の当たり方次第で、同じ風景が大きく様変わりするように、とらえ方一つで物事も大きく変化するのです。
私たちの考え方、在り方で、これからの新しい時代の『夜明け』がやってくるのではないでしょうか?

そんなメッセージを『紅明』という作品が打ち出してくれているように思えます。

詳しく動画をご覧くださいませ。


■ ロッキー田中 ときめきの富士 公式ホームページ
● 皆が見たことのない、なんとも言えない素敵な富士山の写真が、ここにあります。

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