歌が上手に歌える、楽器を演奏できるといった、音楽の才能は、多くの方があこがれをもっている能力の一つ。
ましてや作曲もできてしまうという領域は、実に魅力的な才能です。
音楽の神様に愛されていると言っても過言ではない、現代音楽の作曲家イーガルさんに、実際にどんな風に曲作りをなさっているのか、お話をうかがいました。

イーガルさんのメインのお仕事は、依頼に応じて、それぞれの場面に必要な楽曲を作ること。ステージ用、映像用など、様々なとても素晴らしい曲の数々を作曲されています。
ところが、ご自身のライブで歌われる曲目は、聴いているお客様がおなかを抱えて笑ってしまうようなコミカルな内容のものがたくさんあるのです。
よくぞここまで、曲調が違う曲を大量に生み出せるのかと、ビックリします。

スタジオで、ご披露いただいた2曲も、コミカル系の作品。
一つは、『風の谷のナウシカの組曲』
組曲といっても強烈に短い作品です。
もう一つは、『1990年代後半の小室哲哉プロデュース作品の傾向と対策』というタイトル。

どちらも、実際に動画をご覧いただき、曲をお聴きくださいませ。

前者は、『有名な映画をざっと説明する組曲』の中の一つで、どの曲も、「そう来るのか」とクスっとしてしまう歌詞が魅力です。
後者は『○○の作曲法』というシリーズで、たくさんのミュージシャンの曲作りの特徴を凝縮させた曲目で、どの作品も曲調はそのアーティストのテイストをそのままに、歌詞が爆笑という仕上がり。

「短いものが多いです。ライブハウスに行くと、「曲目、何曲くらいありますか?」とセットリストを書かないといけないんですが、30分あったら50曲くらいになっちゃうんです」とイーガルさん。

一般的に、5分前後で作られている曲が多い中、『秒』の単位で終わってしまう曲も存在するイーガルさんの作品は、本当に短いモノが多いのです。

これらを思いつくのはシャワー中が多いというイーガルさんですが、『作曲法』というシリーズが生まれた経緯は、イーガルさんらしいエピソード。

「もともとは九州の仕事で3ステージやんなきゃいけないのに、東京に楽譜を忘れてしまったことがありました。やばいと思って有名な曲をうろ覚えで弾くと言うのを3ステージやり続けたんです。その時に『有名な曲ってなんだろう?』と思い、『小室哲哉とか特徴どんなんだっけ?』と考えて……」と、その時をイーガルさんは振り返ります。

いつもライブの時に、大量の楽譜を持参して、その楽譜を見ながら演奏なさっているので、イーガルさんにとっては、楽譜は必須。
東京に忘れてきたことが判明した時点でのイーガルさんの慌てぶりが目に浮かびます。

でも、そのおかげで『○○の作曲法』シリーズが誕生したのだと思うと、楽譜を忘れちゃったという事件に感謝です。

ちなみに、お好きなアーティストさんをお聞きしたところ、意外に思える答えが返ってきました。

「めちゃくちゃ難しいし凄くマニアックになっちゃいますが、日本人だったら八代亜紀さん。歌がいいんです。いい歌がめちゃくちゃ多いです。後はちあきなおみさん。あるいは米津玄師さん。あいみょんさんも好きです」とおっしゃるイーガルさん。

めちゃくちゃ渋い!
でも、八代亜紀さんもちあきなおみさんも歌唱力は群を抜いて高いですし、歌詞も曲も深くて濃い作品が多いです。
イーガルさんの年代で、このお二人をチョイスする辺りが、イーガルさんの曲の魅力の土台になっているように感じます。

そして、あいみょん作曲法も、米津作曲法も存在しますし、笑えます。
ライブに行けば、この辺りの曲は必ず聴けるので、実際にお聴きいただきたいです。

また、たくさんの曲を作曲家としての立場から聴いているイーガルさんは、色々な分析をなさっています。
「それぞれのアーティストさんの癖ってメチャクチャありますよ。コード進行のクセとか。そうした影響はなるべく受けないようにと思っていますが、流行っている曲を聴くようにしていて、それを聴くことでそれをしないことができる。敢えてそこを外す。今みんながそれを『やりがち』だということをわかったら、それをしないことで自分らしさを出すとか。社会的な影響、自分にない音楽を作るっていう時にはそういう風にしています」とのこと。

「作曲はほぼ技術です」と言い切るほどに、曲作りの知識と技術が豊富なイーガルさんのご親御さんはピアニストさんで作曲家。
音楽家になることは反対されていたようですが、やはりDNAのなせる業、小学校3、4年生から曲作りをなさっているのです。

さて、緊急事態宣言が延長される中、予定していたイーガルさんのライブも延期になってしまい、多くのファンががっかり。

「普通に考えて『エンターテイメントって不要不急なのかな?』って娯楽のない生活を送るというのは人にそんなにいいことなのかな?と。少しはライブとかエンターテイメントぐらいやっても冷たい目で見ないでほしいと思います。音楽が持っている力、美術・芸術というのは刺さる人には刺さるんです。その人の人生を変える何かになるかもしません。大切にしていただきたい」と、イーガルさん。

実際に、イーガルさんのように作る側の方は、お仕事は続いているので、一応安心なんですが、表現者の方にとっては、昨年は地獄のような1年だったそうです。
一刻も早くこの事態が収束し、自由に表現する方は表現し、自由に観たり聴いたりできるようになってほしいものです。

詳しくは、動画をご覧くださいませ。

■イーガルさんのライブ情報

→イーガルさんの、2021年3月に行われるライブ情報