● 2019年6月9日放送
日本の建設業界が、危機的状況にあると憂えている上場企業の元社長の渡辺さん。
自ら代表理事となって、解決策の一つとなる素敵な財団を作られたとのことで、お話をうかがいました。
戦後の日本の発展のキーワードとも言える『ものづくり』
その中でも建設という、人が生きていく上で欠かすことができない『場』を作る現場に、人材がいなくなるという現象が起こっているのだそうです。
以前、渡辺理事長が社長を務められていたのは、姫路にある上場企業のゼネコン。
渡辺理事長は、人材不足が深刻であるということを痛切に感じて、人材育成のための公益財団法人をポケットマネーで作ってしまった凄い方なのです。
渡辺理事長が作られたのは、『公益財団法人 志・建設技術 人材育成財団』
この財団法人は、建築系・土木系の学生を育成することを目的としたものです。
兵庫県といえば、あの超難関のエリート校、灘高校が有名です。
毎年東大へ多くの生徒さんが進学するのですが、その内毎年120人が医師になるのだそうです。
その他にも理数系の優秀な学校は多くありますが、そこから卒業される学生さんの中に、土木や建築に行く人は、ほぼゼロなのだそうです。
スーパーゼネコンへ向かう学生は3~400人ほどいるそうですが、ほぼ全員が管理部門。
現場を担当することはないとのこと。
たしかにこれは由々しき問題です。
建物も橋も道路も、私たちの生活に絶対に必要なものです。
大きな都市にはそういう人材を扱う中小企業もあるのですが、地方はすっからかん。
さらに恐ろしいことに、現場で汗を流す仕事に従事される方の多くが60歳以上なのだそうです。
この方々が、リタイアしたら、150万人ほどの従事者が一挙にいなくなるということに……。
たとえば、左官技術は習得に5年7年は当り前と言われます。
現場の職人の仕事とは、そういうものなのです。
ですから、昨日まで全然違う仕事をしていた方が、今日から現場で作業をしようと言ってもすぐに出来ることではありません。
こうしたことがあって、渡辺理事長は、自費で用意する金額とは思えない金額をこれからの建築・土木従事者の若い世代に向けて用意されたのです。
資格は、兵庫県出身者であり、県内で建築を目指す方。
なんと、一人あたり年間50万円、大学の4年間の200万円が返済無しです。
毎年20人がこの対象です。
これが今後毎年続くのですから、凄い金額となるわけですが、せっかく大学で覚えた技術知識を社会のために使ってほしいという思いから、渡辺理事長はこの企画に踏み切ったのです。
作り手の心根は、完成したものに必ず反映します。
中にはインチキなことをする業者もあり、安普請で建築した建物が、後々問題を起こしたニュースも過去にありました。
人が生活する建物に欠陥があったら生活や命にかかわることになります。
例えば建設に1億円かかる建物を、できるだけ安く仕上げたいからと2割安い業者を選ぶとします。
1億円の2割であれば、2千万円です。
2千万円分もコストを抑えたら、良い建物ができるはずはないのです。
現場で汗を流す人は、誠実な仕事をなさいます。
埃と雨に左右され、台風で全部やり直す事もある中で、それでも誠心誠意、毎日を積み重ねています。
現状、職人さんは、現場ではベテランになっても、新人さんと給料は2割くらいしか変わらないそうです。
だからこそ、この現場の仕事を本気で取り組む次世代を沢山排出することに渡辺理事長は心血を注いでいるのです。
世界一と言われる日本のクオリティを注ぎ込める現場の方々は本当に偉大です。
多くの若い皆さんが、そこに注目していただけることを願い、そしてまたそれを育成する渡辺理事長に続く方々を応援したいと思います。
詳しくはぜひ動画をご覧くださいませ。