大矢野範義・大矢野亜裕美『湘南リトルツリー』

■ 『湘南リトルツリー』
　　大矢野範義さん　大矢野亜裕美さん

●　2018年10月14日放送

進和学園の福祉の店『ともしびショップ湘南平』の１階にある『湘南リトルツリー』
ここは、とてもおいしいホットケーキ屋さんなのですが、それだけでは終わらない素敵なお店なので、マスターの大矢野夫妻にお聞きしました。

湘南平の展望台駐車場前に、三角屋根が可愛い『ともしびショップ湘南平』はあります。
２階が、進和学園の利用者さんの作品が展示販売されているショップになっており、１階がホットケーキ屋さん『湘南リトルツリー』です。

『多様性と調和』をコンセプトとする店内は、なんと５０種類以上の木が内装に使われていて、このうえなく居心地の良いお店なのです。
店内の大きな木のテーブルを囲む椅子たち。
よく見ると、全部材料が違うのです。
ミカン、梅、柿、ビワの果物シリーズと、どんぐりがなる木々のどんぐりシリーズ。
樹種の違いによる風合いの違いがとても素敵で、どの椅子に座るか迷ってしまいます。

そして、カウンターの前の壁は、何種類もの木で作られたモザイクタイルで飾られています。
これらの木は全て、街中で伐採されて、本来ならば処分されるはずだった木々なのです。

『湘南リトルツリー』のオーナーである進和学園は、『いのちの森づくりプロジェクト』を推進しており、横浜国立大学名誉教授宮脇昭先生の指導の下、どんぐりから苗木を育てています。
その宮脇先生が提唱されている考えの中に、『混植密植』という言葉があります。
それは、限られた面積の中に、たくさんの樹種を混ぜて植えることで、互いが競い合うように伸びていき、通常よりも成長が良くなるという事実から生まれた言葉です。
先生は、好きなものだけではなく、色々なものを『混ぜる』ことは、植樹以外の世界でも大切であるとおっしゃっています。

ここ、『湘南リトルツリー』では、混ざり合うことでみごとな調和が生まれていることを教えてくれています。

さて、本題のホットケーキです。
最近は、メレンゲたっぷりのふわとろパンケーキが流行ですが、『湘南リトルツリー』のホットケーキは、銅板で一枚一枚丁寧に焼き上げた昔ながらのものです。
外はカリッと、中はしっとりとしたおいしいホットケーキには可愛いどんぐりの焼き印が押されています。
　→こちらの『パンケーキ部』で、詳しく紹介されています！

そして、こちらには、独特の特別メニューがあります。
『むかしの味セット』という、ホットケーキとベーコンがひと皿に乗った珍しい組み合わせ。
甘いものとしょっぱい物の取り合わせで、ちょっと不思議な感じがするメニューですが、これはあの、戦後を代表する歴史小説家の池波正太郎先生が生涯愛した組み合わせだそうです。
ホテルでの朝食として、池波先生はコーヒーと一緒にこのセットをよく召し上がっていたというメニューです。
そして、神田には、先生がこよなく愛したホットケーキを出すお店があったそうで、そのお店が閉店されたおり、そこと同じレシピを受けついだ赤坂・梅ヶ丘での人気のホットケーキパーラー『Fru-Full（フルフル）』
この『Fru-Full（フルフル）』さんで修行されたのが、マスターの大矢野さんなのです。

土日限定のメニューもあります。
最高においしいフルーツサンドイッチです。
食パンにキウイ・バナナ・イチゴ・パイナップルと生クリームをサンドした絶妙なバランスの一品ですが、この食パンは、進和学園で作られているものを使用しています。
フルーツサンドの断面図は抜群に綺麗で、これを見るだけでも目にご馳走なのです。

最後に、ここでしか飲めないオリジナルドリンク『湘南とまとみかんジュース』をご紹介いたします。
トマトジュースとミカンジュースのミックスですが、グラデーションが美しいというだけじゃありません。

ここのジュースたちは、ただのジュースではないのです。
進和学園が運営している『湘南トマト工房』のジュースを使用していますが、これは進和学園に在籍されている知的障害をお持ちの利用者の方々が、ひとつひとつ、トマトの傷んでいるところを取ってジュースにしたもので、「トマトを食べるより、このジュースの方がおいしい」と感じるほどの出来ばえで、多くのファンの心を掴んでいます。

実はこのトマトは、市場には出回らない傷のあるトマトや、形が悪いトマトなのです。
本来ならば処分されるトマトたちが、こんなにおいしいトマトジュースに生まれ変わっています。
お店を飾る木々と同じく、現代社会で見捨てられて取り残されている物が、ちゃんと変身できるということを、さりげなく教えてくれています。

現在日本では、残念ながら健常者と障害をお持ちの方々が普通に接する機会がまだ少ないのですが、こういう形で、接点が生まれれば世の中に変化が起こる可能性が増えるはずです。

今、世界は変わってきています。
この波に『混ざる』という新しい風が加わって、世界がさらに新しい方向に向かうことを望まずにはいられません。

「ジュースやパンも『障害者』が作ったものという入口ではなく、ごく普通に、おいしいから飲んだり食べたりしていただきたいのです。」と大矢野夫妻はおっしゃいます。

景色とパンケーキを楽しみに、ぜひお友だちとドライブがてらお立ち寄りください。

詳しくは動画をご覧くださいませ。