● 2018年7月29日放送
『耳なし芳一』のせいか、多くの日本人には、『琵琶』=『怪談のBGM』の印象が強く、ちょっと残念な状態なのですが、その歴史と魅力は、とても奥深いのです。
琵琶奏者の黒田月水さんに、素敵なお話をうかがいました。
毎年11月11日に行われる大阪の『道頓堀慰霊祭』は、今年で第4回。
月水さんは、2回目と3回目にご出演されています。
道頓堀を開削する際に犠牲となった方々の慰霊祭なのですが、多くの隠れキリシタンの方が眠っておられるとのことで、キリスト教の賛美歌、そして仏教からはお経、神道からは祝詞を上げるという、日本ならではの3宗教がコラボするイベントです。
さらに、多くの芸能が奉納される中、黒田月水さんの琵琶の音色が響くと、会場に凛とした空気感が隅々まで行き渡ります。
和装で髪をビシッとアップにした月水さんは、まさに琵琶奏者のプロの顔。
ところが、OFFのときの月水さんは、同じ方とは思えないほどに、とても柔らかな印象です。
そもそも、月水さんが琵琶に携わったのは30年も前のこと。
当時は平凡なOLだったそうですが、ある日、著名な彫刻家の流政之さんとお会いする機会があったとのこと。
突然、「君は琵琶をやりなさい。」と言われて、月水さんは勿論、周りの皆さんもひっくり返ったそうです。
ところがところが。
『琵琶』という漢字。そしてその言葉の響きを改めて感じた月水さんは、なぜかドキドキワクワクが止まらなくなり、「やります」と手を上げて、周りの方々をもう一度ひっくり返らせたとのこと。
「胸に聞いたんです。流さんの言葉が、頭というか、前頭葉にまで行ってない間に、胸が答えを出していました。」
出会いとはそういうものかもしれません。
このエピソードは、OFFのときの月水さんを知っていると、納得のお話ですが、ステージ上の彼女からはなかなか想像ができません。
さて、日本で一番古い弦楽器といわれている琵琶ですが、現代社会では一般的にはあまり馴染みのない存在になっているのは、とても残念なことです。
実は、琵琶が日本に入って来たのは、今から1200年前のことで、発祥の地はペルシャだそうです。
正倉院にはペルシャの物は多いですが、日本の文化にペルシャが与えている影響はとても深いもののようです。
シルクロードの時代、ペルシャから中国を経て日本へ。
その間、ガラス細工の工芸品や水差し等の宝物と共に旅をしてきた琵琶の原型の楽器。
今と違って宿屋など勿論ありませんから、旅の一行は野営をするわけです。
そこで夜の慰めに演奏されたのが琵琶。
砂漠の真ん中の月の下で、「故郷の恋人の目は青くてきれいだ」とか「生まれた村の美しい山河」などを唄って旅人たちが聴き入っている様は、とても幻想的に思えます。
月水さんのお師匠さんはこうおっしゃったそうです。
「哀しいことを哀しく歌わないで。明日、元気になるように歌いなさい。」
もともとは、そういう楽器、そういう音だったのです。ちょっと固定観念を捨てて聴いてみたくなります。
今回、月水さんには、このスタジオで琵琶を演奏していただいているので、動画でご覧いただけます。
なんだか身体の芯が振動するのを感じます。
高揚する感覚をぜひお感じになってください。
私たちの日常で日本文化が見直されてきている昨今、琵琶の素晴らしさももっと知っていきたいものです。
また、月水さんからCDを2枚お預かりしておりますが、そのタイトルは『空海』
空海の一生を全編1曲で綴った音。
聴いた方から、「聴くと元気になります」というコメントをいただくのだとか……。
お聴きになりたいかたは、こちらにご応募くださいませ。
info☆ra-ha.jp
(↑☆の部分を@に変えてくださいませ)
詳しくは、動画をご覧くださいませ。
パリの聴衆を魅了した琵琶と尺八の音色、個性あふれる二つの楽器が阿吽の呼吸で織りなす音楽、美しくも力強い唄語り。ぜひぜひ生でご体験ください!
○日 時:8月4日(土)18:00開場 19:00開演
○場 所:ワロスロード・カフェ
○出 演:黒田月水 (土佐琵琶, 唄)/真藤一彦 (尺八)
○料 金:ライブチャージ 2,500円
テーブルチャージ300円 + ご飲食代
ジャズドラマーの池永一美さんとコラボ演奏。
○日 時:8月11日(土)19:00開場 19:30開演
○場 所:ワロスロード・カフェ
○出 演:黒田月水 (土佐琵琶, 唄)/池長一美(ドラム)
○料 金:予約3,000円/当日3,500円
(別途1ドリンクオーダー)