● 2016年4月10日放送
『葦舟』と『葦笛』、どちらも、普段の生活の中では見ることのないものですが、『葦舟作り』のプロ西川さんに、
とても意義のある魅力的な活動についてお話をうかがいました。
水辺に群生する多年草の『葦(アシ)』は、簾(スダレ)の材料として知られています。
実はこの『葦』、水をきれいにし、古くは神話の中にも登場している奥の深い植物なのです。
お話に入る前に、通常なかなか聴くことができない『葦』で作った『葦笛』の演奏を、西川さんにご披露いただきました。
直径1.5センチ程度の『葦』を30センチほどに切り、穴を開けただけというシンプルな作りの『葦笛』。
この笛の音は、癒し効果抜群の独特の音色を奏でます。
その同じ『葦』の細い部分を束ねると、人が乗れる舟を作ることができるのです。
日本では古代に遡ると、古事記の中にも『葦舟』が登場し、現実の世界の中でも生活やご神事に使われていました。
ところがその後、なぜか長きにわたり『葦舟』はずっと作られなくなってしまっていたのです。
歴史を紐解くと、世界各地で、『葦』に類する植物を使って似たタイプの舟が作られていて、パピルスなどを利用した舟が、
壁画の中などで見ることができます。
そして、西川さんにとっての『葦舟』の先生である冒険家の方は、南米のペルーで作り方を教わったとのこと。
この日本人の冒険家によって、21世紀の今、数千年の空白を経て、日本で『葦舟』は再び作られることとなったのです。
この冒険家の方は、なんと、15~20mの船を作り、太平洋、大西洋を横断するというのです。
ちなみに西川さんは、幅1m、長さ5mの大きさで、大人が2人ほど乗れるくらいの舟を作られます。
簾に使うような、細い『葦』を浸水しないほどに、きつく束ねて『舟』にするのですから、実際の『葦舟作り』は、
一人で作るものでなく、みんなで力を合わせて作っていきます。
作ってみるとわかるのですが、かなりやりがいがあり、完成した時の達成感は、参加者のみが味わえる感動があるのです。
西川さんは、この『葦舟作り』によって、子どもたちに団体行動や仲間意識、達成することの充実感を学んでもらおうというプロジェクトを
作りました。
『葦舟』を作るには、当然材料となる『葦』が必要です。
こちらも、なかなか大変な作業なのですが、先に『葦舟作り』と『葦舟体験』をしている子どもたちは、
「葦舟を作って、葦舟に乗って遊びたい! その舟の材料を自分たちの手で刈り取るんだ」という前向きな意識を持つことができます。
この順序が逆だと、うまくいきません。
物を作り出す為に全ての工程に関わるというのは、その対象に対する理解や愛着、
そして出来上がった物を大切にするという気持ちを育むことへと繋がります。
『葦』をはじめとする川辺の植物は、水を浄化し、ゴミをせき止めて海へ出さない役目を果たし、
地球という生命体の活動の一部を担っています。
実際の体験を通じて、子どもたちは、こうしたことまで学んでいくのです。
里山運動ならぬ、里川運動です。
このように、『葦』や、水辺の植物を有効に利用して発展を遂げてきた人類。
世界各地に、似たような『舟』が存在するのは必然かもしれません。
舟をつくるという作業から有史始まって以来の人々の考えを知ることもできる……。
とても興味深いお話でした。
詳しくはどうぞ動画をご覧くださいませ。
● 『葦舟作り』の情報が、満載!
テクニカルなことから、
イベントまで、色々なことが掲載されています。